サ
サバさん (8s8sijdp)2024/1/22 19:44 (No.1049326)削除☆涼馬と楽が学園寮に入ったばっかりのころの小話☆
楽「あは。涼馬、八度三分だって。今日は学校休んで寝てなさーい」
涼馬「今日はテスト日なんで、行きます」
ベッドから無理やり起きようとする涼馬の額を、楽がドッと指でつく。
涼馬「ウ゛ッ」
まくらにボスッともどされた涼馬。
楽「食欲は?」
涼馬(苦渋に満ちた顔で)「…………ないです」
楽「いちおう今、冬だからね? 昨日おそくまで、外で筋トレしながら問題集みてたでしょ。そんなアセって成績上げなくてもいいのにさ」
楽は冷蔵庫からスポーツ飲料のペットボトルやゼリー飲料をぽいぽい放り、冷えピタを涼馬のおでこに貼って、自分は通学のしたく。
楽「ぼくも昼には終わるから、その時、食堂でおかゆでも作ってもらってくるね。それとも、なんか食べたいものある?」
涼馬「……すみません」
楽「〝スミマセン〟って食べ物は聞いたことないなぁ?」
涼馬「………………じゃあ、くだもののカンヅメとか……」
楽「了解」
楽はニッと笑って、部屋を出て行った。
~午後~
涼馬、悪い夢を見ていたはずが、かすかな鼻歌でうっすらと目が覚める。
だれかが、手をにぎってくれている?
部屋着の楽が、ベッドの横に座り、タブレットをいじっていた。
いつの間にか、もう放課後になっていたらしい。
そして――、楽の左手が、自分の手に。
とりかえてくれたらしい氷まくらのおかげで、首筋が冷たくて気持ちいい。
おぼんには、小皿にもられたシロップづけの桃とおかゆ。
熱を出したのもひさしぶりだけれど、こうやって、だれかに看病されたのもひさしぶりだ。
涼馬はぼんやりと楽の横顔をながめる。
たぶん、自分がうなされていたから、手をつないでくれたんだ。
右手だけじゃ、タブレットも使いづらいそうなのに。
申し訳なくなった涼馬が、そっと手をぬこうとすると――。
「!」
楽がやたらと驚いた顔で、急いで手を引っこめた。
我に返ったように、自分の手と涼馬をすばやく見比べて、なにか怖いことが起きたみたいに顔をこわばらせる。
「……楽さ、」
「――熱。どう? 脈は朝より落ち着いてたけど、もう一度体温はかってみな」
言葉をかぶせられた。
体温計を取りに行く楽は、もういつもどおりだ。
今、脈をはかってくれていた?
でも、脈なら手首でとるだろう?
涼馬は、いぶかしく思いながら、もどってきた楽を見つめる。
「テストのことが心配? 涼馬の担任、追試してくれるって言ってたよ。よかったね」
「ありがとうございます」
「お。受け答えがしっかりしてきた。食べられそうだったら、それ食べて、また寝てな」
楽はぽんとふとんをたたくと、自分の机にもどる。
「……あの、楽さん。ありがとうございます」
「なにが? ああ、看病? 『守』のテスト範囲の復習にさせてもらってるだけだから、気にしなくていーよ」
「はい」
勉強を始めた楽をしばらく眺めていて、涼馬はふとんにモゾッともぐった。
手のひらをにぎりこむ。
だれかに手をにぎってもらうのも、すごく、ひさしぶりな気がした。